酸化銀電池とは?化学反応、メリット・デメリットと正しく選ぶべき理由

酸化銀電池とは?化学反応、メリット・デメリットと正しく選ぶべき理由

「腕時計の電池が切れたから、100均やコンビニで似たようなボタン電池を買ってこよう」……

ちょっと待ってください!その電池、本当に「酸化銀電池」ですか?

見た目はそっくりなアルカリボタン電池(LR)を腕時計に使うと、すぐに止まってしまったり、大切な機器を壊してしまったりするかもしれません。

今回は、精密機器の心強い味方である酸化銀電池について、その特徴と選び方を徹底解説します。

目次

酸化銀電池(SR)とは?

酸化銀電池は、正極に酸化銀、負極に亜鉛、電解液にアルカリ水溶液を用いた「使いきり」の一次電池です 。電池に刻印されている「SR」という記号(Silver Oxide)がその目印となります 。

構成要素材料
正極(+極)酸化銀(Ag2O)
負極(ー極)亜鉛(Zn)
電解液水酸化カリウム/水酸化ナトリウム
(KOH/NaOH)

最大の特徴は、放電の末期までグラフが非常に平坦な「安定した電圧特性」にあります 。

公称電圧は約1.55Vで、精密な動作が求められるアナログ腕時計や体温計、医療機器などの電源として最も信頼されている電池の一つです 。

酸化銀電池の化学反応式

酸化銀電池の内部では、以下のような化学反応によって電気が生み出されます。

酸化銀電池の仕組みと反応式
正極(カソード)

Ag2O + H2O + 2e → 2Ag + 2OH

負極(アノード)

Zn + 2OH → ZnO + H2O + 2e

全反応

Ag2O + Zn → 2Ag + ZnO

この反応において、正極の酸化銀が還元されて金属銀(Ag)に変化するため、放電が進んでも内部抵抗の変化が極めて小さく、寿命が来る直前まで一定の電圧を維持できるのが大きなメリットです。

酸化銀電池(SR)のメリット・デメリット

酸化銀電池は、その名の通り貴金属である「銀」を原料に使用しているため、他のボタン電池にはない際立った特性を持っています 。

メリット:精密機器に不可欠な「信頼性」

極めて安定した放電電圧

放電の終止直前まで、約 1.55V という電圧をほぼ一定に維持できます 。アルカリボタン電池(LR)のように使用に伴って電圧が緩やかに低下することがないため、アナログ時計の歩度(時間の進み具合)を狂わせず、体温計などの計測器で正確な測定結果を得ることができます 。

高いエネルギー密度

同じサイズのアルカリボタン電池と比較して、より多くの電気容量(100mAh程度)を蓄えることが可能です 。これにより、小さなボタンサイズでも腕時計を数年間動かし続けるような長期の電力供給を可能にしています 。

優れた液漏れ耐性

構造的に密閉性が高く、長期間機器に入れっぱなしにしても電解液が漏れ出すリスクが低く設計されています 。高価な腕時計や精密機器の内部を腐食から守るという点でも、非常に信頼性が高い電池です 。

環境負荷の低減

かつては性能維持のために水銀が使用されていましたが、現在は技術革新により多くのメーカーが「水銀0(ゼロ)使用」を実現しており、環境に配慮した選択が可能です 。

デメリット:導入・運用時の注意点

コスト(価格)が高い

正極に高価な酸化銀を使用しているため、アルカリボタン電池(LR)と比較すると販売価格が高くなります 。安価な玩具やLEDライトなど、電圧の安定性がそれほど重要でない用途には、コストパフォーマンスの面でアルカリ電池の方が適しています 。

特定の回収フローが必要(廃棄の手間)

酸化銀電池は貴重な資源(銀)を含むため、自治体の不燃ゴミとしてではなく、家電量販店や時計店に設置された「ボタン電池回収缶」への投入が推奨されています 。また、廃棄の際は端子同士が接触してショートしないよう、テープで絶縁する手間も必要です 。

誤飲のリスクと危険性

非常に小型であるため、乳幼児やペットが誤って飲み込む危険性があります 。万一飲み込むと、体内で放電が起こり食道や胃の粘膜を激しく損傷させる恐れがあるため、保管には細心の注意を払わなければなりません 。

大電流放電には不向き

長期間微弱な電流を流し続けるのには適していますが、パワーが必要なモーター駆動などには向いていません 。ただし、アラームやライト機能付きの時計向けには、大電流負荷に対応した「W(ハイレート)」タイプも用意されています。

アルカリボタン電池(LR)との決定的な違い

見た目がそっくりな「アルカリボタン電池(LR系)」とは、中身も性能も全く違います。

スクロールできます
項目酸化銀電池 (SR)アルカリボタン電池 (LR)
電圧約1.55V(最後まで安定)約1.5V(徐々に下がる)
主な用途腕時計、体温計、精密機器玩具、LEDライト、小型ゲーム機
コストやや高め安価
液漏れ耐性高い酸化銀電池よりは低い
腕時計や体温計にはSRを!

アルカリボタン電池(LR)は使用とともに電圧が下がるため、時計が遅れたり、体温計の測定精度が落ちたりすることがあります 。
機器が「SR」を指定している場合は、必ず酸化銀電池を選びましょう。

型番の読み方と互換性

電池の裏側を見て、「SR44」や「SR626SW」といった文字を確認してください。

  • 最初の文字: 「SR」は酸化銀電池を意味します
  • 数字(例:44): サイズを表します
  • 末尾のアルファベット(W / SW):
    • W: バックライトやアラームがある「高消費電流」タイプ用
    • SW: 時計の針を動かすだけの「低消費電流」タイプ用
      ※「W」は「SW」の代わりとして使えますが、その逆は動作が不安定になる場合があります

安全な使い方と「もしも」の時の対処法

酸化銀電池はボタン電池出ることや、内部の化学物質の影響でいくつか注意点があります。

誤飲に注意

ボタン電池は小さいため、乳幼児やペットが誤って飲み込むと非常に危険です 。食道などで化学反応が起き、短時間で重症化する恐れがあります 。

  • 保管: 子供の手の届かない高い場所や、鍵のかかる場所に保管してください 。
  • 交換: 電池を交換する姿を子供に見せない(興味を持たせない)ことも大切です 。

廃棄とリサイクル

酸化銀電池は、一般のゴミとして捨ててはいけません。

  1. 絶縁する: 他の電池や金属と接触して発熱・破裂しないよう、+極とー極をセロハンテープなどで覆います 。
  2. 回収缶へ: 家電量販店、時計店、眼鏡店などに設置されている「ボタン電池回収缶」に入れてください 。

よくある質問(FAQ)

100均のアルカリ電池でも動きますか?

動作はしますが、電圧が不安定なため、時計の精度が落ちたり、液漏れのリスクが高まったりします。

大切な機器には酸化銀電池を強くおすすめします 。

使用期限はありますか?

はい。パッケージに記載された推奨期限内に使用してください。

最近では環境に配慮した「水銀0(ゼロ)使用」のモデルも一般的です 。

精密な時間を刻み続けるために、また正確な数値を測るために。あなたの機器に最適な「酸化銀電池」を選んで、安全に活用してくださいね!

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