みなさんは、黄色いパッケージや、電動工具のバッテリーで「Ni-Cd」という文字を見たことがありますか?これは「ニッケル・カドミウム蓄電池」、通称「ニカド電池(ニッカド電池)」のことです。
今でこそスマホやノートPCのバッテリーといえば「リチウムイオン電池」が主役ですが、ひと昔前までは、このニカド電池こそが充電池界の絶対王者でした。
「古い電池でしょ?」と侮るなかれ。実は、そのタフさと瞬発力で、今でも特定の場所で活躍している現役選手なんです。
今回は、ニカド電池の仕組みを化学反応式を使って解説しつつ、有名な弱点「メモリー効果」や歴史について、高校生レベルの知識でまるっと紹介します!
ニッケル・カドミウム蓄電池(Ni-Cd)ってどんな電池?
ニカド電池は、繰り返し使える「二次電池(蓄電池)」の一種です。
1899年に発明された非常に歴史のある電池で、乾電池のような形をしたものから、業務用の四角いものまで様々な形があります。
基本スペック:電圧は1.2V
普通のアルカリ乾電池は1.5Vですが、ニカド電池の電圧は約1.2Vです。
「あれ? 電圧が低いと動かないんじゃない?」と思うかもしれませんが、ニカド電池は電気を流すパワー(電流)がとても強いため、ほとんどの製品で乾電池の代わりに使うことができました。
ニカド電池やニッカド電池、またはカドニなどの呼び方もありますが、「ニッカド電池」「カドニカ」は三洋電機の登録商標です。本ページではニカド電池で統一します。
ニカド電池の仕組みと化学反応式
電池の中では、プラス極(正極)とマイナス極(負極)の間で、電子のキャッチボールが行われています。ここからは化学の授業っぽくなりますが、噛み砕いて見ていきましょう!
ニカド電池の”材料”
- 正極
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オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)
- 負極
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カドミウム(Cd)
- 電解液
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水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液(KOH)
ニカド電池の”化学反応式”
右向きの矢印(→)が放電(電気を使うとき)、左向きの矢印(←)が充電(電気を貯めるとき)を表します。
- ① 正極の反応(プラス側)
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放電時、オキシ水酸化ニッケルが、水と電子を受け取って「水酸化ニッケル」に変化します。
NiOOH + H2O + e− ⇄ Ni(OH)2 + OH−
- ② 負極の反応(マイナス側)
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カドミウムが、水酸化物イオンと反応して電子を放出し、「水酸化カドミウム」になります。
Cd + 2OH− ⇄ Cd(OH)2 + 2e−
- ③ 全体の反応(まとめ)
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この2つを合わせると、電池全体の反応式になります。
2NiOOH + Cd + 2H2O
⇄2Ni(OH)2 + Cd(OH)2
ニカド電池最大の特徴「メモリー効果」とは?
ニカド電池を語る上で避けて通れないのが「メモリー効果」です。これは、「電池を使い切らずに継ぎ足し充電すると、容量が減ったように見える現象」のことです。
メモリー効果は「サボり癖」がついた電池のイメージ
例えば、電池をバケツの水に例えてみましょう。
本当は底まで水が入っているのに、いつも半分(50%)使ったところで水を継ぎ足しているとします。
すると、電池はこう勘違いしてしまうのです。
「あ、いつもここで終わるんだな。じゃあ、ここ(50%の地点)を底だということにしよう!」
このあと、いざ50%より下まで使おうとすると、電池が「えっ、もう底ですよ?」と言わんばかりに、急激に電圧を下げてしまいます。これがメモリー効果です。
実際には電気は残っているのに、電圧が低すぎて機器が動かなくなってしまうのです。
対処法:リフレッシュ充電
もしメモリー効果が起きてしまったら、「一度、完全に空っぽになるまで使い切る(完全放電)」ことで解消できます。「ここが本当の底だよ」と電池に思い出させてあげるわけですね。これをリフレッシュと呼びます。
なぜスマホやパソコンから姿を消したのか
かつては主役だったニカド電池ですが、今では家庭用機器ではあまり見かけません。理由は大きく2つあります。
1. 強力なライバルの登場
ニカド電池よりもたくさんの電気を貯められる「ニッケル水素電池」や、さらに高性能で軽い「リチウムイオン電池」が登場しました。
スマホのような「小さくて長持ち」が求められる機器では、大きく重いニカド電池は勝てなかったのです。
2. カドミウムの環境問題
これが一番の理由かもしれません。
負極に使われている「カドミウム」は、イタイイタイ病の原因物質としても知られる有害な重金属です。
環境への配慮から、EUをはじめ世界中で使用が制限されるようになりました。
それでも現役! 今でも使われている意外な場所
「じゃあ、もう絶滅したの?」というと、そうではありません。
ニカド電池には、最新の電池にも負けない「とがった長所」があるからです。
- 瞬発力がすごい!:一気に大量の電気(大電流)を出すのが得意です。
- タフで頑丈!:過酷な使い方をしても壊れにくく、寒さにも比較的強いです。
そのため、現在でも以下の用途で活躍しています。
- 電動工具(一気にパワーが必要!)
- 非常用照明・誘導灯(いざという時確実に点灯させたい!)
- ラジコン(モーターをブン回したい!)
最新の繊細な電池よりも、「多少手荒く扱っても文句を言わず、馬力を出してくれる頑固なベテラン」として、プロの現場で生き残っているのです。
まとめ
- ニカド電池は、パワーとタフさが売りの歴史ある充電池。
- 化学反応では、正極のNiOOHと負極のCdが電子をやり取りする。
- メモリー効果があるため、継ぎ足し充電には注意が必要(たまに使い切ろう!)。
- 有害なカドミウムを含んでいるので、捨てる時は絶対に一般ゴミに出さず、家電量販店などの「充電式電池リサイクルBOX」へ!
もし家で古い充電池を見つけたら、「これが充電池の歴史を作った先輩か…」と思い出しながら、正しくリサイクルしてあげてくださいね。

